(ためしがき アズサイ)



 注) ・試し書きなので途中から始まっています。
    ・アズマが乱暴者です。
    ・9課にパズは存在しないという前提です(笑)
    ・シチュは「何かの任務で怪我して長期入院してるサイトーさんを見舞うアズマ」です。

 オッケー、という方だけどうぞ。

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 すると、アズマは、
「抜いてやろうか?」
と、唐突に聞いてきた。
「何?」
 思わずサイトーは聞き返したが、
「長い入院生活で溜まってんじゃないか? センパイ」
 ベッドに身体を乗り出してきてサイトーの横に手をついたアズマに、顔に息がかかるほど間近で囁かれ、思わず目を瞑る。一瞬、ぎくりと心臓が跳ね上がったのをごまかそうと、サイトーは口の端を上げて言った。
「……溜まってんのは、自分じゃないのか。こないだみたいに」
「こないだは……何日も仕事が続いてアッチが切羽詰ってたから、仕方ないだろ」
「それに付き合わされたおれの身にもなれよ」
「嫌なら嫌って言えばいいだろ」
 アズマは怒ったように言うと、サイトーの首筋に顔を埋めてきた。耳の下に乱暴にキスをされ、サイトーは思わず小さく唸る。
「よせ、ここ、病院だぞ」
 覆い被さっている背中を乱暴に叩いてやると、耳元でアズマの声がした。
「有線する」
 首筋に熱い息がかかり、ぎくりと身体が反応する。
 いちいち反応してしまう自分に戸惑いながら、舌打ちしたサイトーは、
「馬鹿言え、有線は嫌いだ」
と、返事を聞く前にケーブルを引っ張り出そうとしているアズマを片手で押し留めた。
「じゃあ……じゃあどうすりゃいいんだよ」
 アズマが苛立ったように眉を寄せ、自分の体重を右手で押し返すサイトーに詰め寄る。
「おれは別に頼んでない」
 苦笑して言うサイトーをむっとしたように見つめていたかと思うと、アズマはサイトーの口を自分の口で塞ぎ、強引に唇を割り開いて舌を捻じ込んできた。「抜いてやる」と自分から言い出したくせに、先にその気に突入してしまって止められなくなったのを誤魔化しきれなくなったらしい。
 ――アズマのやつ、どういうつもりだ?
 サイトーは、数週間前、初めてアズマに抱かれた時の記憶が蘇ってきて、複雑な気分になった。


―――

 ひどく手こずる任務が続いてセーフハウスにすら帰れないため、性欲が切羽詰まっていたというのはアズマだけだ。
 サイトーからすれば寝たというより強姦されたという方が正しい。
 サイトーが仮眠室で平和に寝ていたところへ、個室に突然入ってきたアズマが「やらせろよ」と強引に求めてきて事に及んだわけで、激しく抵抗したものの出力を上げた義体にあっという間に押さえこまれてしまったのだ。

 サイトーも普段から男女区別なく相手をしていたし、別の状況で普通に誘われれば対応も違っていたかもしれない。しかしその日のサイトーは連日の強行軍で疲労の限界だったし、数十時間ぶりの食事にありついてやっと眠りに落ちたところだったのだ。
「誰……アズマか? おい、何を……?!」
 いきなり押し入ってきたアズマが片手でサイトーを押さえ込み、もう片方の手で自分のベルトを抜いていることに気づいたサイトーは息を呑んだ。
 思いもよらない相手でしかも後輩ときている。疲労と眠気で力の入らないサイトーが状況を把握できないうちに、乱暴に着衣を剥ぎ取られ、無理矢理にキスをされた。
「よせ、やめろ」
 首をねじってアズマの唇から逃れるものの、両手首を拘束され、重い義体に圧し掛かられて身体を押さえつけられる。何とかアズマから逃れようと抵抗を続けてしばらくもみあううち、アズマの舌打ちが上から聞こえたかと思うと、いきなり頬を音高く平手打ちされた。
 義体の腕から繰り出された一撃に、サイトーが一瞬気が遠のいた隙に、一気に下着ごと脱がされて強引に身体を割り開かれる。
「……っあァ!!」
 あまりの痛みにサイトーは悲鳴を上げたが、アズマはちょっと眉をしかめただけで止めようとしない。
 ここでやっとサイトーは、下手に抵抗しない方が楽だと悟り、諦めて力を抜いた。が、それをいいことにアズマに何度も体勢を変えられ乱暴に突き上げられ、苦痛は増すばかりで快感どころではない。サイトーはアズマが早く達してくれるのを願いながら、仮眠の前に食べたばかりのものを吐きそうになるのを堪えるので必死だった。

 結局、アズマの性欲処理に一方的に付き合わされたサイトーがやっと解放されたのは、一時間以上経ってからだった。
 痛む身体を動かすこともできず荒い息に胸を上下させながら、やっと正気を取り戻したのか困惑したようにサイトーの足元に座り込んでいるアズマを睨む。
「……馬鹿野郎が」
 右手の傍にあった枕を掴み、アズマの顔をバフンと殴る。
 そして、
「無茶しやがって」
とサイトーが言うと、アズマは、
「……ごめん」
とだけ言って、のろのろと着衣を整えると振り向きもせず逃げるようにして仮眠室を出て行ってしまった。

 その出来事があった次の日、二人は何事もなかったかのように普段どおり顔を合わせた。嵐のような任務も一段落つき、前日の出来事は二人とも口にはしなかった。
 とはいえ、さすがに数日の間はサイトーもポーカーフェイスの下でアズマに腹を立てていたし、考えなしの馬鹿なヤツだとは思っていたが、今さら乱暴されたと騒ぐような歳でも性格でもない。不思議と嫌悪も感じていなかった。
 むしろそのことを思い出そうとすると、苦痛や怒りよりも、サイトーの身体に溺れて恍惚としていたアズマの表情や逞しく荒々しい腕の感触ばかりが記憶に蘇ってきて、何だか妙な気分になった。
 サイトーはしばらくの間、よくわからないその感情を処理できず持て余していた。

―――

(さすがに病院ではまずくないか?)
 アズマが完全にベッドに乗り上げてきて本格的に濃厚なキスを始めた頃には、サイトーも次第に下半身が反応し始めキスだけでは収まらない雰囲気になってきて、内心焦った。今回は拒む気はないし、この昂ぶりを処理できた方がこちらとしても助かるが、いつ誰が来るかわからないこの状況は非常にまずい。
「おい……」
「カメラはハッキングした。ドアも開かないようロックしてる」
 唇の間でアズマが囁いた。キスしながらどうにか事に及ぶ方法を考え、電脳上で病院のコンピュータに細工したようだ。9課の一員としては軽い小細工だが、違法もいいところだ。
「誰が部屋の前を通るかわからん」
「角部屋だろ。誰も通らないって」
「それにおれは怪我人だぞ」
 体中あちこちに包帯が巻いてある怪我人の上着を捲り上げていたアズマは、
「気をつけるから……な?」
と言って、そっとサイトーの身体を抱き寄せた。
「……そうしてくれ」
 サイトーはため息をついて諦めると、身体の力を抜いた。下手に抵抗してこの間の二の舞になるのはごめんだ。
 アズマはそんなサイトーの心中を察したのか、言いにくそうに、
「こないだは、悪かったよ」
と呟いてサイトーの目を覗き込んでくる。
 サイトーはその目をぎろりと睨み返した。
「今日はああいうプレイは無理だぞ」
「いや、あれはプレイっていうか……」
「がっつくなよってことだ」
「……あー……ごめん」
「もう、いいけどな」
 珍しく殊勝なアズマが可笑しくて、サイトーはつい許してしまう。
 本当に、この感情は何なんだか。
 今日、こいつと寝てしまったら、またしばらく悩みそうだ。




 ・・・うーん、アズサイ、ありかなあ? でもパズがいないっていう前提じゃないとこれは書けない(笑)
 こんなの書いといてナンですが、付き合っても、性格の不一致ですぐ別れそうですね(笑)


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