接吻のとき 〜KISS 3種



 超短文の上、他愛もないお話ですが、カップルをシャッフルしています。
 パズサイ、バトグサ以外のカプが嫌な方はご覧にならないでください。

 大丈夫ですわ。お見せなさい。という方は、スクロールしてご覧ください。






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きみは何を考えてるんだ
目をつむり
鼻をかすかにふくらませて
きみは何を考えてるんだ
ぼくのこと
それとも自分のこと
それとももっと他のこと
    (syuntaro tanigawa「接吻の時」より)





1.
 おれは薄暗い物置部屋に連れ込まれ、壁に背中を押し付けられて口付けられている。
 背中には冷たく硬いコンクリを、唇には相手の熱い体温を、
 それぞれ感じて目を閉じている。
 抵抗はとっくに諦めた。
 力の差がありすぎる。
 身の内から這い上がる震えと、頭の芯から滑り落ちる理性とがせめぎあう。
 相手が夢中なのか冷静なのかそれすらも量りかね、なすがままになっていると。
 急に抱きしめられ、息が詰まった。
 冷たい壁と背中の間に熱い腕がもぐりこみ、胸には相手の身体が押し付けられる。
 「何を考えてる? サイトー」
 耳の中に熱い吐息で問いかけられても、おれは答えない。
 それはこっちの台詞だ。
 お前こそ何を考えてる? バトー。


2.
 スーツには赤い血糊。頬には黒い煤。乱れた髪は額に落ちている。
 まだ殺気と興奮が全身に渦巻いているから。
 おれはとりあえず口に煙草を咥え、青い空を見上げた。
 ゆっくり吸い込んでから煙を吐き出すと、
 どす黒い感情は煙に混じって空の雲と同化していく。
 手の甲で陽光を遮り、滑るように流れていく雲を目で追っていると、
 「行くぞ、パズ」
 今日の相棒がおれの肩を叩いた。
 吸っていた煙草を黙って差し出すと、トグサも何も言わずに受け取った。
 吐き出された雲がもうひとつ空へ上っていっても。
 おれたちの興奮は完全には醒めてくれない。
 おれはトグサを引き寄せて。
 トグサは素直に寄りかかる。
 お互いの考えは詮索せずに、
 おれたちは貪るように口付けた。
  


3.
 こいつに付き合っている女がいると知っているけれど。
 おれとどうなるつもりもないと分かっているけれど。
 我慢するのは嫌いだから。
 苦しそうに身じろぎする身体を捻じ伏せ押さえつけて、強引に口付ける。
 何か言おうとして開いた唇の間に舌をねじ込んだら、押さえつけた身体が一瞬震えた。
 押し入ったシャワールーム。
 開いたままの蛇口。
 上から降り注ぐシャワーの水が、冷たい棘でおれの背中を責め立てる。
 目を見開いた相手にじっと見上げられ。
 その目に気圧されて。
 柔らかい唇を食むのを諦めて、おれはやっと身体を離した。
 「……いいかげんにしろよ、アズマ」
 おれが背中を向けると、ヤノが呆れたように呟くのが聞こえた。
 その声に怒りが混じらないのは、なぜだろう。
 この強引な悪戯も、もう三度目だ。
 未だにこいつが何を考えているかわからない。
 ヤノの声に呆れ以外の色が混じるまで、おれはこの悪戯をやめるつもりはない。




                                                  


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