ささやかな情事



 注) 
 このお話はバトグサ前提ではありません。
 当サイトの他のssとは無関係のお話です。
 よろしくってよ。という方は下へどうぞ。


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 顎に手をかけて上向かせ、椅子に座ったままのトグサにキスをする。
 短くなった襟足を惜しむように撫でながら、アズマは黒髪のトグサに優しく口付ける。

 トグサは抵抗するでもなく、自分からキスを返すでもなく、かたく目を閉ざしたままアズマを受け入れる。
 合意しているのではない。抵抗を諦めているだけということをアズマは判っている。
 だからこそこうして深夜、トグサが独り残業をしている時などを狙って一方的な情事をつかの間楽しむことでアズマは満足しているのだ。

 そのトグサのデスクには常に伏せられた写真立てがある。

 アズマがこの密やかな悪戯を始めた頃、トグサは苦い顔をして抵抗していたのだ。
 それでもアズマがやめる気配を見せなかったため、せめてもの抵抗のつもりかある日トグサがデスクに置いたのが家族写真だった。
 ある時、アズマはトグサを振り向かせようと頑なな顎に手をかけたところでその写真に気付き、むっとしてトグサと写真を見比べていたが、やがてため息をついて写真立てを静かにデスクに伏せた。
 トグサの家庭を壊すつもりは毛頭無いが、その家族の顔を見たところで何を感じるわけでもない。
 さすがに目の前でキスをする気にはなれなかったので伏せたまでだ。
 トグサの無言の警告なのだろうとは思ったが、アズマを思いとどまらせるには至らない。
 朝になるとトグサの手で立て直される写真。
 しかしそのうち常に伏せられたままになり。
 トグサも抵抗をしなくなった。
 アズマも今では伏せられたままの写真を目の端で捕らえながらトグサにキスをすることにも慣れてしまった。

 アズマは時々考える。
 多忙なトグサの隙をついてささやかな情事を繰り返すことに意味はあるのだろうか。
 この先何かが変わることを期待しているのは自分だけなのか。
 伏せられた写真を再び立てもせず、デスクから取り去るわけでもないトグサの真意はアズマにはわからない。


 初!アズトグです。
 なぜかアズマが絡むとどうしてもギャグ方面へ走ってしまうので、今回はあえてシリアスに書こうと努力した結果がこの意味不明な文章・・・(笑)。
 こんなので申し訳ないのですが、いつもアズトグ充したいと呟いておられた傘子さんに捧げます。


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